4章 ― 解放の呼び声: 七人の影のサムライ伝説

七人の影のサムライ伝説

こんにちは、\イッカクです/
今回は、SF寓話シリーズ
「七人の影のサムライ伝説」の4回目。

4章 ― 解放の呼び声

彼女が最初に叫んだのは、拘束された弟の名だった。
弟は、SNSで金融勢力の不正を告発した直後、
突然「治安維持法違反」の名目で拘束された。

裁判は非公開。証拠は開示されず。
家族は沈黙を強いられた。

彼女は声を上げた。
最初は路上で、次にネットで、
そしてやがて地下の放送局で。
だが、彼女の声は常に遮られた。
検閲、遮断、誹謗中傷。
彼女の叫びは「ノイズ」として処理され、
社会の耳には届かなかった。

そのとき、彼女はアトラスの断片に触れる。
それは「声の構造」を再設計する技術だった。
音波を符号化し、検閲をすり抜ける周波数に変換する。
感情の波形を増幅し、
共鳴を起こす。
彼女の声は、ただの叫びではなく
「解放の呼び声」へと変わった。

彼女は地下の放送局から、
都市全体に向けて発信を始めた。
「あなたの声は、消されていない。
届いていないだけだ」
その言葉は、拘束された者たちの心に届き、
沈黙していた者たちの口を開かせた。

彼女が今、訴えているのは
「声の回復」ではない。
それは「声の連鎖」だ。
一人の叫びが、次の者を呼び覚まし、
やがて都市全体が共鳴する。

彼女の目的は、沈黙を終わらせること。
声を取り戻すのではなく、
声を繋げること。
彼女は言う
――「声は、孤独ではない。響き合うとき、牢獄は崩れる」

こうして、七人の影の四人目
――解放の呼び声を響かせる者が誕生した。
彼女の声は、アトラスの光を宿し、
都市の沈黙に最初の裂け目を走らせた。
その裂け目は、やがて叫びの洪水となり、
支配の構造を押し流す。

つづく。

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