2章 ― 言葉の橋:七人の影のサムライ伝説

七人の影のサムライ伝説

こんにちは、\イッカクです/
今回は、SF寓話シリーズ「七人の影のサムライ伝説」の2回目。

2章 ― 言葉の橋

彼が初めて声を挙げたのは、
母親が「信用スコアの低下」によって医療ローンを拒否された日だった。
病院の窓口で、冷たい声が告げた。
「あなたは支払い能力がないと判定されています」
その判定は、金融勢力のアルゴリズムによって下されたものだった。
彼女は働いていた。
税金も払っていた。だが、数字の網は彼女を「不適格」と断じた。

彼はその瞬間、言葉の力を信じるようになった。
怒りではなく、説明する力。
叫びではなく、伝える力。
彼は演説者となり、街頭に立った。
最初は誰も耳を傾けなかった。
だが、彼の言葉は「なぜ我々は黙っているのか?」
という問いを孕んでいた。

やがて彼は、地下のネットワークで「アトラス」の断片に触れる。
それは単なる技術ではなかった。
言葉に「浸透力」を与える力だった。
監視社会のフィルターをすり抜け、
金融勢力の検閲を回避し、
庶民の声を世界へ届けるための構文変換、
符号化、共鳴設計
――アトラスは言葉を「橋」に変える技術だった。

彼はその力を使い、演説を再構築した。
「我々は数字ではない。生活だ。感情だ。未来だ」
彼の言葉は、広場の群衆に届き、
やがてネットワークを通じて世界へと広がった。

彼が今、訴えているのは「声の回復」だ。
庶民が自らの言葉を持ち、
それを遮られずに届けられる社会。
彼は言う――「言葉が届かぬ社会は、死んでいる」

彼の目的は、言葉の橋を築くこと。
それは単なる通信ではない。
共鳴であり、連帯であり、未来への道である。

こうして、七人の影の二人目
――言葉の橋を渡す者が誕生した。
彼の声は、アトラスの光を宿し、
牢獄の壁に最初の振動を与えた。
そしてその振動は、
やがて構造そのものを揺るがす波となる。

つづく。

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