こんにちは、\イッカクです/
今回は、SF寓話「七人の影のサムライ伝説」シリーズの7回目。
7章 ― 審判の座
彼女の名は知られていない。
だが、かつて彼女は「秩序の設計者」と呼ばれていた。
金融勢力の中枢で、
都市の構造を設計し、
情報の流れを最適化し、
社会の効率を高める役割を担っていた。
彼女の手によって、都市は静かになった。
争いは減り、声は整列し、感情は抑制された。
だが、ある日、彼女は自ら設計した都市の中で、
一人の少年の沈黙に出会う。
その少年は、言葉を持たなかった。
彼女は調査した。
教育は施されていた。
医療も受けていた。
だが、彼の沈黙は「設計された沈黙」だった。
都市の構造が、彼の声を「不要」と判断し、育てる機会を奪っていた。
その瞬間、彼女は自らの設計を「罪」と認識した。
彼女は中枢を離れ、
都市の地下へと姿を消した。
そして、アトラスの最深部に触れる。
そこには、彼女がかつて設計した秩序とは異なる構造があった。
それは「共鳴による選択構造」だった。
効率ではなく、感情と意志の振動によって未来が決まる構造。
彼女は言う
――「秩序は、声を殺す。だが、共鳴は声を生む」
彼女は、七人の影の集結を導いた。
それぞれが異なる役割を果たし、
異なる痛みを抱えながらも、
共鳴の場へと集まった。
そして今、彼女は「審判者」として、都市の頂に立つ。
塔の頂には、アトラスの装置が設置されている。 それは都市全体の振動を測定する共鳴計。 言葉、知識、記憶、声、通信、構造――すべてが共鳴するか否か。 その共鳴が、宇宙的な扉を開く鍵となる。
彼女は都市に問いかける。
「あなたは、誰と共に未来を選ぶのか?」
「恐怖と分裂を選ぶか、統一と対話を選ぶか」
彼女の声は、
かつて設計者だった者の声ではない。
それは、罪を知り、赦しを求め、未来を託す者の声だった。
こうして、七人の影の最後の者
――審判者が誕生した。 彼女の存在は、アトラスの意志そのもの。
その意志は、地球の孤独を終わらせ、
宇宙との対話を始めるための最終試験だった。
そして、都市は震え始める。 それは恐怖ではなく、覚醒の予兆だった。

