第3章 制度設計と生活実感
──移民問題に映し出される「制度の暗部」

制度設計と国民生活

こんにちは、\イッカクです/
今回は、制度の闇の部分についてです。

第3章 制度設計と生活実感
──移民問題に映し出される「制度の暗部」

みなさん、ちょっと考えてみてください。
普段の生活の中で「制度」というものを
意識する瞬間って、どれくらいあるでしょうか?
税金を払うとき、役所に手続きをしに行くとき、
あるいは保険証を使って病院にかかるとき…。
多くの場合、
制度は“当たり前”に存在していて、
空気のように目立たないものですよね。

ところが、
その見えない制度の設計ひとつで、
私たちの暮らしが大きく揺さぶられることがあります。

今回取り上げる「移民問題」も、まさにその典型例といえるでしょう。

■ ホームタウン構想をめぐる論争

2025年、日本の国際協力機構(JICA)が
「アフリカのホームタウン構想」を発表しました。

山形県長井市とタンザニア、
千葉県木更津市とナイジェリアなど、
地方都市とアフリカの国々を結びつける取り組みです。

表向きの目的は
「日本の人口減少」と「アフリカの雇用不足」という
双方の課題を、交流を通じて解決していこうというもの。
一見すると、Win-Winで、国際協力らしい
前向きなプログラムに思えますよね。

でも、ここからがややこしいところ。

このニュースが海外メディアに伝わったとき、
全く違う切り口で報じられてしまったんです。
「日本が移民の扉を開いた」
「特別ビザがもらえる」
――そんなセンセーショナルな見出しが踊りました。

結果、国内でもSNSを中心に
「これは事実上の移民政策では?」
という不安が一氣に広がっていったんですね。

地元では抗議活動まで起こり、
自治体や政府関係者は
「治安が悪化することはない」「誤解だ」と
火消しに追われる事態に…。

ここまで騒ぎになった背景には、一体何が潜んでいたのでしょうか?

■ 制度的な抜け穴──「特定活動」ビザ

実は、この論争の本質は
プログラムそのものよりも、
日本の出入国管理制度の“仕組み”にありました。

とりわけ焦点となったのが「特定活動」
と呼ばれる在留資格です。

この特定活動、ちょっと不思議な制度なんです。

国会は「こういう目的で外国人を受け入れますよ」と
いう大まかな枠組みだけを法律で決めます。
でも、その具体的な中身
――つまり「どんな活動を許可するか」という
一番肝心な部分は、法務省が「告示」という形で
後から自由に決められる仕組みになっているんです。

はぁ?ですよね。

つまりこういうことです。
国会の議論を通さなくても、
政府の一存で「新しい在留資格の中身」が次々と追加できてしまう。
スピード感があるといえば聞こえはいいですが、
国民からすれば
「いつの間にこんな制度が?」と
置き去りにされる危うさを含んでいます。

実際に、公式に告示されている特定活動だけでも46種類。
さらに、告示には載っていない
「個別ケースごとに裁量で認められる」ものが
数え切れないほど存在すると言われています。

まさに“見えない抜け穴”が制度のあちこちにある状態なんですね。

■ 制度の不透明さが生む不安

この仕組みがあるために、
国民の間にはこんな見方が広がります。
一度日本に入国してしまえば、
その後は特定活動ビザで
いくらでも滞在延長できるんじゃないか?

だから、政府が「今回は特別なビザは出しません」と説明しても、
ほとんど安心材料にならない。
制度が不透明であればあるほど、
国民の不安や不信感は増幅されていくのです。
これは単に移民をめぐる誤解の問題ではなく、
制度そのものへの信頼を損なう深刻な要因といえるでしょう。

■ 国民生活への影響

もちろん、外国人労働者や移民の受け入れには
メリットもあります。
労働力不足の日本社会を支えるうえで
欠かせない存在になる可能性もあるでしょう。
しかし、制度が水面下で拡張され続けるなら、
地域社会に突然大きな変化が押し寄せることになります。

治安への不安、
福祉や教育への負担、
そして地域住民が抱く「安心感」の揺らぎ。

これらはすべて、国民生活の基盤に直結するものです。
だからこそ、透明性を欠いた制度運用は、社会全体にとって
リスクを孕んでいると言わざるを得ません。

■ 制度を問い直す契機として

今回の論争は、単に
「4つの町とアフリカを結ぶ交流」の話に
とどまりません。
むしろ浮き彫りになったのは、

日本の制度設計そのものの脆弱さです。

「法律は大枠、詳細は行政が裁量で決める」
――この日本型の仕組みは、
確かにスピーディーな対応を可能にします。

でも、その反面、
民主的な統制を弱め、
国民の納得感を欠いたまま制度が拡張していく
危険をはらんでいます。

では、どうすればよいのか?

結局のところ、制度を一度決めたら終わりではなく、
社会の変化に応じて
「選び直す」視点を持つしかないのだと思います。

国会での丁寧な審議、
国民に対する十分な説明、
そして何より透明性の確保。
これらが伴ってはじめて、
制度は暮らしを支える“見えないインフラ”として
信頼されるのではないでしょうか。

移民問題をめぐる今回の議論は、
日本の未来を考える上で大切な問いかけを私たちに投げかけています。

それは「誰のための制度なのか?」という
根源的な問いです。

次の章では、この問いをさらに深めつつ、
制度改革の方向性を一緒に考えていきましょう。

つづく。

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