第5章：制度に抗する市民言語の再構築
─語り・構想・実践の連携

制度は、誰かが「与える」ものではなく、
私たち市民が「構築する」ものです。
その本質を見失ったとき、制度は支配の道具となり、
私たちの生活や尊厳を脅かします。

だからこそ、制度の再設計は、
市民一人ひとりの言葉から始まらなければなりません。
語りを取り戻し、設計に関与し、運用を監視する
──それは、個人の営みであると同時に、連携の力でもあります。

本章では、「市民・県民を守る制度とは何か」を問い直しながら、
その再設計に向けた言語・構想・実践の可能性を探ります。

制度に抗するだけでなく、制度を創り直す。
そのための市民的知性と倫理的意志を、ここから言語化していきます。

制度は語りによって正当化されます。
「国際貢献」「多文化共生」「人材育成」
──これらの言葉は、制度の善意性を演出するために使われます。

しかし、私たちはその語りを鵜呑みにするのではなく、
問い直す必要があります。
その言葉は誰の視点で語られているのか。
何を覆い隠しているのか。現場の実態と一致しているのか。

市民が制度語彙を再定義し、自らの言葉で語り直すこと。
それが、制度に抗する第一歩です。
「支援」ではなく「囲い込み」、
「交流」ではなく「操作」、
「共生」ではなく「同化」
──言葉を変えることで、制度の本質が見えてきます。

制度設計は、専門家や行政機関だけのものではありません。
市民が制度の構想に関与することは、民主主義の根幹です。

そのためには、
制度設計の前提を問い直す力が必要です。
誰が設計したのか。
どのような利害が絡んでいるのか。
市民の声は反映されているのか。

市民が制度設計に関与するためには、
構想力を育てる必要があります。
代替案を考える。
設計原則を提示する。
透明性・説明責任・市民参加という三原則を軸に、
制度の再設計を構想する。

制度は「批判」するだけでは変わりません。
「構想」することで、初めて市民の手に戻ってくるのです。

語りを再構築し、構想を共有したら、次は実践です。
制度に抗する言葉を、
現実の場で発信し、
連携していくことが求められます。

SNSでの発信、ブログでの問題提起、地域での勉強会
──これらはすべて、市民言語の実践の場です。
制度の語りに異議を唱え、
設計に疑問を投げかけ、運用の実態を検証する。

一人の声は小さくても、
連携すれば制度を揺るがす力になります。
市民が制度の外側から問いを突きつけることで、
制度の内側が変わり始めるのです。

制度は、乗るものではありません。
問うものです。
その語りを疑い、設計を精査し、運用を監視する
──それが、市民による制度の再構築です。

制度に抗する市民言語は、単なる批判ではありません。
それは、
倫理的抵抗であり、
構造的問いかけであり、
未来への構想です。

次章では、
制度文書の精査と市民質問力について掘り下げていきます。
制度の語り・設計・運用がどのように文書化され、
どこに乖離や虚飾が潜んでいるのか
──その見抜き方を一緒に考えていきましょう。

つづく。