第12章: 最後の目覚め:短編小説「わたしは水滴、そしてすべては海へ」

サトコの目覚め

第12章: 最後の目覚め

サトコは、深い森の中に座っていた。
静かな風が葉を揺らし、
木々の間から漏れる光が柔らかく彼女の顔を照らしていた。
何も語らずとも、すべてを感じることができるような、そんな瞬間だった。

「全ては繋がっている」

その言葉が、彼女の内側から響いた。
もはや疑う余地はなかった。
サトコは、すべての存在が一つの流れの中で共鳴し、
交わりながら形を変えていくことを知った。
自分が水滴であり、同時にその水滴が海であることを、完全に理解した。

彼女は今、ただその流れの一部として存在していた。
何のために生まれ、
何を成すためにこの世界に来たのか。
答えは既に彼女の中にあった。
そこにあるのは、ただの「存在」であり、
他のすべての「存在」との共鳴だった。

サトコは、もう自分の力で世界を変えようとは思わなかった。
彼女が目指すべきは、
ただ調和の中で「存在すること」そのものだった。
それが宇宙の摂理であり、最も自然な生き方だと感じていた。

「戦うことは必要ない。ただ、流れに身を任せればいい。」

彼女は微笑んだ。
これまでの激動の人生が、
すべてこの瞬間に繋がっていると感じることができた。
過去の痛みや葛藤、疑念も、
今ではすべてが彼女を成長させるための一部だったと理解できる。

サトコは、目を閉じて深く息を吸った。
心の中で全てを受け入れ、
手放す感覚が広がる。
彼女の周りに漂う波動が、世界と一体となる瞬間を感じ取った。

そして、静かに目を開けた。
彼女の中にあった疑念や不安は、もはや消え去っていた。

「私は、ただ存在している。」

その一言が、全てを物語っていた。
彼女はもう、何を求めることもなかった。
最初から最後まで、すべては彼女の中にあった。
それを感じ取ることができた瞬間、サトコは完全に「目覚めた」のだ。

彼女はそのまま、
目の前に広がる森をゆっくり歩き始めた。
すべての音が、すべての光が、すべての存在が、
共鳴し合う中で響いている。
サトコの歩みが、
その調和の一部となり、
自然と共鳴し合い、静かに広がっていった。

世界は、すでに完璧である。
それをただ、感じ、受け入れることができるようになった今、
サトコはただ一つ、
心から感じたことを言葉にした。

「ありがとう。」

その言葉は、森の中に響き渡り、
やがて風となって広がり、全ての存在に届いていった。

完。


このサトコの目覚めシリーズ「わたしは水滴、そしてすべては海へ」をお読み頂きありがとうございます。

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